issue 15
ジョン・カナヤのヨーロッパの〝手土産〟を彷彿とさせるスイーツワゴンのサービス。食後のスイーツの美味しさのみならず、ホテルバーとは一味ちがう夜の時間が流れます。
美味しいディナーをいただいたあとも、まだすこし話し足りない、飲み足りない─そんなお客様の声にお応えして、2012年からスタートした色とりどりのプティフールが並ぶ「スイーツワゴン」のサービス。お食事後、お客様にはダイニングから暖炉のあるラウンジへとお移りいただき、食後のドリンクを片手にお好きなスイーツと共に過ごす、リゾートならではの甘美なひとときをお愉しみいただいております。
アンティーク調のおしゃれなワゴンに載っているのは、今年で10周年を迎えるオリジナルブランド「JOHN KANAYA」のショコラや焼き菓子、そしてフランスを代表するマカロンなどのスイーツたち。夜の帷のおりた静かなラウンジで、ワゴンよりお好きなスイーツをお選びいただき、コーヒーやワイン、ウイスキーなどをお供に宵の続きをお愉しみください。
このスイーツワゴンには、鬼怒川金谷ホテルの創業者、ジョン金谷鮮治のこんなエピソードがあります。
ヨーロッパ各地の名レストランを訪れ、食の知見を深めていったジョンは、数々のスイーツを子どもたちへの海外土産に持ち帰りました。家族はもちろんホテル従業員の子どもたちにも、ジョンは手土産を忘れませんでした。ジョンが贈る、当時はたいへん珍しかった本場フランスのショコラやマカロンを、子どもたちは瞳を輝かせて待ち望みました。そして、ジョンは異邦のスイーツを〝Would you like ?〟(おひとつどうぞ)と、ちいさな紳士淑女たちに英語で勧めたのだそうです。
そんな小粋な演出にはジョンの温かい人柄ともてなしの心があふれていました。ホテルマンたちにとって、スイーツワゴンはジョンのおもてなしの精神を受け継ぐ大切なサービスなのです。
「このスイーツワゴンが、毎回、愉しみなのよね」
取り分けられる色とりどりのプティフールを見つめながら、そう語る女性のお客様も多くいらっしゃいます。
ハーブティーをお共にスイーツで寛ぐご婦人の隣には、ブランデーグラスを掌で温めながらお酒に合うレコルテ ドゥ ショコラに指をのばす紳士。
多彩な最上級スイーツをお酒で嗜まれる方も、コーヒーやティーで愉しまれる方も、暖炉のまえで一緒の時間を過ごされる光景。スイーツワゴンの魅惑は、アルコール中心のホテルバーとはちがう寛ぎと甘やかに流れる時間にもありそうです。
ワゴンにはフェンネルの香のする一枚のノアールチョコレートが載っています。懐中時計をデザインしたショコラの表面で、時計の針は〝23:59〟を指して止まっています。その時刻はシンデレラの魔法が解ける寸前の永遠のひととき。今宵も、スイーツワゴンは醒めない夢と永遠につづく幸福な思い出を、お客様にお贈りいたします。
2022年2月掲載
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