issue 19

大地と清流が育てる、
日光の奇跡の米。

滋養米

「どうすれば、こんな旨い米が作れるのか」。鬼怒川金谷ホテルの料理人たちが驚嘆し、今も当館の御食事になくてはならない「滋養米」。美味しさの秘密を探訪する旅へ。

鬼怒川金谷に欠かせない「滋養米」

「田代さんの滋養米を味わえば、他のお米に替えるのは難しいですね」。
そう、鬼怒川金谷ホテル副料理長の青森氏は賞讃します。栃木県日光市の米農家・田代恵一さんの作る「滋養米 自然農法コシヒカリ」は、ホテルの毎日の食事に欠かせない逸品。炊き上げた滋養米は一粒一粒が瑞々しく、ぴんと粒立ち、ふっくら銀色に輝きます。
「滋養米は味がじつにしっかりとしたお米です。噛めば噛むほど米本来の旨味、甘味、香がじゅわっと口中に広がります。豊潤というのでしょうか。お客様からも大変好評をいただいております」。
そんな滋養米の美味しさの秘密を知りたくて、日光市塩野室町にある田代さんの田んぼを訪ねました。
心地好い風が稲をゆらし、高原山と男体山を見晴らす、エメラルドグリーンの滋養米自然農法水田の前で、生産者の田代恵一さんと奥様のフサノさん、お二人の相談役で滋養米の精米・栽培確認・農産物検査・販売を担当する株式会社渡辺和哉商店 代表取締役の渡邉仁さんが笑顔で出迎えてくれました。

田代ご夫妻

日光の大地と米の力を信じて

「私たちの作る滋養米は完全な純植物型の自然農法です。農薬と化学肥料は使わず、草取りも手と動力除草機で。肥料は精米時にでる滋養米などの米ぬかのみ。あとは水田の地力だけで育てます」と語る田代さん。渡邉さんも「水田から生まれたものを水田に返す。何も足さず、何も引かない、理想的な米作りですね」。田代さんの滋養米は唯一「日光ブランド」に認定されたお米。日光にご旅行中の上皇上皇后両陛下も好んで食されたとか。

田代さんの田んぼ

しかし〝理想〟を叶えるには、長い年月と並々ならぬ努力、家族の結束が必要でした。
「家内と二人で自然農法に踏み切ったのは四十年前。最初の模索は農薬と肥料で力をなくした水田の土を健康な土に作り直すことでした。最初は完熟した牛ふん堆肥の投入から始めましたが、初年は一反の8分の1、わずか一俵しか収穫できず、家族と頭を抱えました」。
収穫量が安定したのは七年後。「徐々に土作りが出来てきて、十年前からは、米ぬかのみを肥料とする純植物性自然農法にたどり着きました。滋養米ができたのは常識を覆す家内の発想力、大地と米本来の生命力を信じて真面目に頑張った結果ですね。雑草や虫に負ける稲では良い米に育ちません」。水田を潤す清流に浸した米農家の掌が、夢を追う「真面目」さを何よりも物語っていました。

田を潤す清水

家族の健康への祈りから

繰り返すまでもなく、現在の農業は大量の農薬と化学肥料を使用します。そもそも、田代恵一さんが純植物型の自然農法に挑んだのは、家族のこんな言葉がきっかけでした。
「うちの子は生来、薬品を摂取できない体質だったんです。主治医には〝病気の時は栄養のあるものを食べて静かに寝ていれば大丈夫〟と言われていました。
ある日、病気で寝ている子どもを看ていた家内が〝田んぼもお米も自然の生命力と治癒力で育つのよね。私もあなたが農薬まみれで働くのは心配〟と言いました。それからずっと一緒に自然農法の米作りに取り組んでくれています。滋養米も家内と考案した名前で、お米を食べる人、作る人、田と大地の滋養になってくれれば、という想いが込められています」。

日光市塩野室町の田んぼ

滋養米を美味しくいただく

渡邉さんも「弊社は国の登録農産物検査機関でもあるので、農産物検査員三名が常駐して品種、等級の検査をしています。また、無農薬無化学肥料栽培で生産確認のお手伝いもしています。田代さんの滋養米は毎年、最高品質のA級をキープしているんですね。収穫後のお米は年を越して梅雨を過ぎると味が落ちてゆきますが、田代さんのお米は夏になっても不思議と旨い。精米工場ではお米をHACCPで管理しながら、最新型光選別機を導入して異物除去を徹底しています。こうして安全安心で精米したての滋養米を、美味しさそのままに鬼怒川金谷ホテルさんへお届けしています」。

滋養米

そんな厳選された稀少な滋養米を、鬼怒川金谷ホテルではどう炊いているのか。副料理長の青森氏が滋養米をご家庭でも美味しく炊くコツを教えてくれました。
「滋養米クラスのお米はデリケートなお米ですので、やや繊細に扱うのがポイントです。お米を研ぐ時には水の中でやさしく撫ぜるように、ゆっくりかき混ぜながら研いでください。一般米のようにガシガシ研ぐと米粒が割れてしまいます。
また一般米は水を切って乾かすと、炊飯時に水分の吸収が良くなり、上手に炊けると言われています。でも滋養米は乾燥させなくても、お米自体の水分と旨味成分の保有が非常に良いので、適度に水を切ればご家庭の炊飯器で美味しく炊けます」。

滋養米

鬼怒川金谷ホテルになくてはならない、田代恵一さんの滋養米。
その美味しさを当館でもご家庭でも、ぜひ、ご賞味ください。

(取材協力 株式会社渡辺和哉商店 、田代さんご夫妻 )

2023年7月掲載

[産地直送] 滋養米コシヒカリ

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30年以上前から農薬・化学肥料を一切使用せず、手間暇かけて作られた自然農法米。
ホテルの夕朝食時に炊きたてのご飯として提供しているお米です。

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