シガーの薫香ただよう
旅の物語を紡ぐサロンへ

憧憬のシガーサロンへ

「鬼怒川金谷ホテルのシガーサロン、それはジョン・カナヤの“好き”が詰まった夢のサロンですね」とシガーサービス担当の野口涼太さんは話します。
リンカーンコンチネンタルに乗り、白のモーニングジャケットにシャポーを粋に着こなす、創業者ジョン金谷鮮治はシガー愛好家でもありました。
オールド・ノリタケのアッシュトレイ、アンティークのゲームテーブル、銘酒のボトル、レザーソファ。ガブリエル・ロワール氏に特注したスカルプチャードグラスが燦然と輝き、拘りのスピーカーからはジャズが聴こえる－ジョンの愛した品々に囲まれ、重厚な英国風サロンで愉しむ紫煙。シガーサロンは愛煙家にとって憧憬の空間です。
野口さんは「ジョンは家族との夕食後、コーヒー、ショコラ、シガーで一服する時間を大切にしていたそうです。私達はこの宵の儀式を『ジョンのスリーC』と呼んでいます。当館シガーサロンの壁には、愛煙のキューバ産葉巻コイーバを手にしたジョンのポートレートも架けてございます。お客様にはジョンと同じに、ディナーの後もシガーサロンで葉巻や煙草を心ゆくまでお愉しみいただけたら幸いです」と語ります。

シガー初心者も記念に

「当館で初めて葉巻を試される。そんなお客様もいらっしゃいます。普段は喫煙されない若いお客様が、シガーの醸すリッチで成熟した魅力に誘われて『宿泊の記念に吸ってみようかな』と。スタッフが易しく手ほどきいたします」と野口さん。
お客様のためにスタッフがシガーカッターで吸い口を丁寧にカット。専用マッチで火をつけ火口を整えます。「シガーをお召し上がりになる際はソファに深々と座り、ゆったりとお愉しみください。葉巻は指先で吸うのではなく、利き手の人差し指と中指の根元まで葉巻をぐっと挿し入れて持ちます。すると指の間で葉巻が安定し、堂々と格好良く吸うことができます。初心者の方にはチャーチル元英国首相も愛煙したダビドフのショートサイズを。カマーチョやジノなど、シガー愛好家にもご満足いただけるドミニカ産高級レアシガーもご用意し、葉巻と相性の良いヘネシーなどのブランディ、コニャック、スコッチも揃えております。ジョンのスリーCもお試しください。ショコラの甘さと風味をシガーのスモーキーな香が引き立て、紫煙で口中が乾いたらコーヒーで潤す。大人のリッチな遊び、シガー体験は旅の特別な思い出になりますね」と愉し気に語りました。

充実のシガーセレクト

鬼怒川金谷ホテルでは良質なサービスのため、いつでも逸品のシガーを揃えてお客様をおもてなししたいと考えています。
「シガーサロンでは主にドミニカ産とニカラグア産の高級葉巻を中心にご用意をしております。本当はキューバ産、たとえばジョンが愛好したコイーバもご提供したいのですが、いまは国際情勢が不安定で輸入が儘なりません。とはいえ、当サロンでは選り優りのシガーをお愉しみいただけます。ダビドフ銀座店から仕入れているプレミアムシガー、ダビドフ・プリメロスは細身で吸いやすく、初心者のお客様にお薦めしております。木の香や甘い花の香も感じられ、親しみやすい名葉巻です。中級者用のグリフィン３００チューボは、ロングサイズで葉巻らしい葉巻ですね。とてもウッディで口当りはスムーズ。余韻が素晴らしく、シガーファンに定評のある一本です。そして、ドミニカを代表するカマーチョ・ニカラグア・ロブスト。甘く、スパイシー、オーク樽の味わいが優れていて、上級者でもご満足いただけるレアシガーです。最後は、ジノ・プラチナム。錐型のクラシックスタイルで、格好良いですね。濃厚でしっかりしたアロマ。ファン垂涎の葉巻です」

シガーサロンが紡ぐ物語

お酒と共に人類の永い文化史を歩んできた煙草。その中でも最高位のテイストとアロマを誇るシガーに、人はなぜ魅せられるのでしょう。
野口さんは「なんと言っても、シガーは格好良いですから」と答えます。
「昔の映画はシガーが登場するシーンが印象的でした。男性俳優ならアラン・ドロン、アル・パチーノ、クリント・イーストウッド。女性俳優なら、やはりマレーネ・ディートリヒ。ファムケ・ヤンセンやメラニー・ロランもシガーを嗜む姿がセクシーでしたね。そんな見た目の格好良さに憧れて、人はシガーや煙草を吸いはじめるのではないでしょうか」と野口さん。
コロナ禍も終息して、シガーサロンで葉巻を試されるお客様も増えているそう。「若いカップルのお客様で、初めてシガーを嗜まれる男性がいらっしゃいました。その方にはダビドフをおすすめして、アルコールはコニャックを。いつものように、格好良くお愉しみください、とシガー作法をご説明いたしました。
女性のお客様は非喫煙者だったのですが、それでもとても喜ばれて。『私の代りに、葉巻を吸う彼の写真を撮ってください』と。男性のお客様がシガーを吸い終えて ラウンジに戻られた後も、おふたりはショコラとドリンクを愉しまれながら写真を見て、仲睦まじく談笑されていらっしゃいました。幸せそうでしたね。通常の喫煙ルームでは起こりえない、当館のシガーサロンならではの滞在シーンではないでしょうか」と嬉しそうに話しました。

2024年8月掲載