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全国の品評会で最高位賞をたびたび受賞している「とちぎ和牛」。その味に魅せられた総料理長青山憲正と、とちぎ和牛肥育の匠、松本一男さん(小山市・松本農場)が対話しました。
青山 鬼怒川金谷ホテルでは、とちぎ和牛を和風ビーフシチューやステーキでご提供しています。「とちぎ和牛 匠」は脂のサシがじつに綺麗です。赤身も大切ですが、脂を焼いた時のえも言われぬ香り、ジュワッと口に広がる甘みが素晴らしい。和牛はそこが一番重要だと思うんです。鉄板膳所かなやのシェフも絶賛していました。
松本 それは牛のもつ力ですね。その力を引き出す飼い方をすれば、体も大きく肉質も優れた牛に育ちます。それには牛の生活ストレスをできるだけ減らすこと。近年は酷暑もありますが、毎日、ちゃんと食欲があって餌を元気に食べられる環境を整える。牛の体調や行動に目を光らせて、獣医さんや農協さんとも相談しながら愛情を注いで細かくケアしてあげることが大切です。
青山 松本さんの牛たちは表情が穏やかで落ち着いていますね。たしかに牛の体づくりには毎日の食事が重要。人間にも通じることですね。

松本 ここは米所なので良質な米と稲藁が豊富です。清らかな井戸水も。牛は草食動物なので素飼料の藁が不足すると栄養をつける配合飼料や米も食べなくなります。牛は藁を食べることで第一胃のルーメンを健康かつ良好に保ち、配合飼料を食べて体が大きく育つのです。牛の肥育には本当に恵まれた環境で、循環農業が成功していますね。
青山 とちぎ和牛はAB4等級以上で認定となりますが、松本さんは5等級を九割以上の確率で出現させてしまう第一人者です。たとえば暖冬だと脂のノリが悪いことはありますか? 猪は冬に肥えて春先から脂を落としていきますが。
松本 自然の生命だから、ありますね。でも、それではいけない。とちぎ和牛に旬があってはいけないと考えています。つねにベストの味と最高の肉質をキープしていたい。そうでないと、料理人は困りますよね。

青山 じつは今度、とちぎ和牛で作る金谷セレクトオリジナルの生ハムをご提供します。サシの甘さと風味が絶品の希少部位、トモサンカクをスライスにして。モモはスライスではなく厚切りにし、あえてブロック形にします。噛んだ時、とちぎ和牛本来の肉質ともちもちの弾力、芳醇な香りと旨味を存分に愉しめるように。
松本 和牛の生ハムは珍しい。トモサンカクの生ハムも贅沢ですが、モモの生ハムをブロック形にして食すというアイデアに興味津々です。こんなふうに、どんどん、とちぎ和牛を新たなステージに送ってほしいですね。
青山 とちぎ和牛の味とクオリティだからこそ実現できた生ハムです。地元に優れた生産者さんと販売者さんがおられることで、直に対話を重ねながら新たな美食を生みだせる、お料理も進化することができます。

青山 松本さんの牛はお米を食べるんですか?
松本 JAグループで「とちぎ和牛」を肥育するには、飼料に栃木の米を足すのが条件なんです。米を食べる牛は肉の風味が増して、脂の質もよくなります。栃木のトウモロコシも配合されています。それで牛たちの肉づきのいい大きな体と健康な筋肉、骨格ができます。あと、コシヒカリの藁って、うちの牛が好きなんですよ。
青山 藁にも牛の好みがある?
松本 はい。コシヒカリ藁は牛の食いつきが断然ちがいます。なにかが他の藁とはちがうんでしょうね。牛もそれを敏感に感じとっているんです。牛の堆肥も田んぼに還元して、また米を作って稲藁にしてもらう。理想的な循環型農業ですね。この田園地帯での和牛飼育はとても理に適っていると思います。
青山 なるほど。いま、持続可能な農業が盛んに議論されていますね。鬼怒川金谷ホテルでもSDGsを推進していますが「とちぎ和牛」は美味しいだけではなく環境にとってもベストなんですね。

青山 よい和牛の育て方はありますか?
松本 いろいろと秘訣はありますが、なにより牛が毎日、元気に餌を食べられるということが大切。つまりは胃ですね。生後十ヶ月の牛を購入してから三ヶ月くらいは牧場の環境に慣らすこと、第一胃を大きく拡げることを念頭に素飼料を中心に肥育します。他の牛と喧嘩しないように配慮したり、健康、食欲をこまめにチェックしたり。強く健やかな胃ができてきたら、餌をだんだん増やし、食欲のピークをキープする。餌を食べたり、食べなかったりのムラを丁寧なケアで減らしていきます。食欲旺盛な時期を長く保つことが、よい牛を育てることの条件ですね。近年の酷暑や気温の変化はもちろん、牛は気圧の変化にさえ敏感なんです。
青山 松本さんにとって、良質な牛とは?
松本 無駄な肉がついていなくて、骨格がしっかりしている牛。素飼料、牧草とか藁をしっかり食べた牛は第一胃が大きい。そういった素質のある牛を購入すると、肥育前はそれほど体が大きくなくても、ちゃんといい牛に育ちます。自分が丹精込めて、手塩にかけて育てれば育てるほど、牛たちはその努力に応えてくれるんですね。「とちぎ和牛」はそういう牛だと思います。

2026年8月掲載

希少なA5ランク国産黒毛和牛「とちぎ和牛」を贅沢に使用した、極上の生ハムセットです。熟練の技術で仕上げた、芳醇な香りと奥深い味わいが広がるプレミアムな逸品を、是非ご堪能ください。
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